ふと、母の遺品を押し入れから引き出してみると、そこにはいくつかのアルバムがあった。
その中に、祖父、古川ロッパが撮ったと思われる一枚の写真があった。

撮影日は、1954年5月、とある。メモからわかるとおり、この犬は紛れもなく、我が家に飼われていた「初代(2代目かもしれない) チェリ」だ。
このアルバムには、チェリのほかに「ボビ」という犬も写っているが、チェリのほうが断然、数が多いし、メモ書きから読み取ると、どうやらチェリは大変忠誠心の強い、賢い犬だったらしい。

時は半世紀以上超えた2011年。我が家に再び「チェリ」の名を持つ犬がやってきた。50年以上前の大先輩に負けず劣らず、利口な犬だ。
50年後、門さんの子供たちが4代目「チェリ」を飼うことになったら、この写真を見て門さんに説明してもらいたい。「チェリは我が家の忠犬につけられる、100年続く伝統的な名前なんだよ。」